「21g」
人間が死ぬと、身体が21g軽くなる。
だから、魂の重さって21gなんだって。
仮定だそうだけど、そんな学説がある。
だから、僕はたった21gの存在だ。
「でかい図体しやがって」
「うわぁ、でけぇなぁ」
なんて、色々言われるけど、それは鎧という僕が張り付いている入れ物を指して、言う事であって、僕自身は血印こそが本体だ。その血印に封じ込められている僕はたった21gの存在でしかない。
兄さんが大事な右腕と交換したのに、等価交換の筈なのに、僕はわずか21g。
そんなもので、釣り合ってるなんて何だかおかしい。僕は羽よりも軽いなんて。
だから、兄さんが僕の事で必死になったり、狂ったように愛してくれたり、壊れたみたいに苦しんだりしないでいいんだよ。
抱きついて、取りすがって、唇噛み締めて、僕を人間だ、人間なんだよ、何度も繰り返さないでいいんだよ。
僕はツライんだ。
僕はたった21gの存在でしかないけど、その程度で必死に兄さんを抱きしめようと、守ろうとしてるけど、僕の手は、腕は軽すぎて、もう兄さんを包んであげられない。
それでも、兄さんは僕の身体にしがみついて眠ってる。出したばかりの精液まみれになって、荒かった呼吸も眠りが深くなっていくに従って、静かになって、やっと意識を失っていく。
もう失神するように激しく抱かないと、兄さんは眠る事すらできない。
目を閉じる事すらできない。
どうしたらいいんだろう。
もうどうすればいいんだろう。
側にいる事すら兄さんの負担になってしまった。
僕は消えたらいいのかな。
僕が消えてしまう時、一緒に兄さんの記憶から僕を消してしまったらいいのかな。
兄さんを守れるなら。時間切れになる前に。
そう考える日が増えていく。
僕が消えても、風が吹く程にも世界は感じないだろう。
たった21g。
羽が落ちた程にも感じない僕の存在。
それが兄さんを苦しめ、兄さんを生かしてる。
全身全霊をかけている。
だから、僕は黙って、あなたを愛すよ。
最後の瞬間まで、僕たちの制限時間まで。
あなたが全身全霊をかけたように、僕の全てをかけて。
それだって、わずか21gなのだけれど。
エンド
アルエドお題「離さない」のあの後。
私は原作派なので、基本的にうちの兄弟は楽天的で前向きなのですが(勿論、内面 の葛藤や闇は凄いですが、余りそれを出したくないので)それも何なので、ちょっと罠を仕掛けてみる事にしました。
夏コミ本の習作という感じで。
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