「5ヶ月目」


「う〜、寒いですね」
 手に息を吐きかけながら、アレンは呟いた。
「そうか?」
 神田は手を伸ばして、アレンの左手を掴んだ。
「暖かいじゃないか。俺の方が冷たいぞ」
「……そうですね」
 アレンは一瞬、今、掴まれた左手を見下ろした。
 本当にそうだった。神田の手の方が冷たかった。


「………フフ」
「何だ、モヤシ。気色悪い」
「いえ、別に」


 左手に触られる。
 何でもないように、普通の人に対してみたいに、この手を握られる。
 いつもそうしてるように触れられる。
 それがどんなに貴重な事か、あり得ない事なのか、
 そして、嬉しい事なのか
 あなたは知らないんでしょうね。


 それをしたのは今まで二人。
 そこにあなたが加わる事がどんなに幸福な事か。


 キスするより、抱き合うより、そんな事がどんなに嬉しくて、幸せな事か。
 そして、その事があなたには、きっとほんの些細な事でしかないのだろうという事が
 その事が幸福感をもっと強くしてくれる。


「神田は寒いんですか?」
「別に」
 アレンはいきなり後ろから神田に抱きついた。神田は飛び上がる。
「なっ、何すんだ、モヤシッ! いきなり!!」
「いいじゃないですか。誰も見てませんよ」
「だからってなぁ!」
「いいでしょ? くっついた方が暖かいんですから」
「つけ上がるなよ、こら」
「僕は寒いんです」
「勝手にしろ」
「はい、勝手にします」



 そして、勝手にさせてくれる。
 こんな事をさせてくれるようになったあなたといる、この幸せ。

エンド

ただの甘々が書きたかったんです。

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