クロスはその強さに笑みを刻んで、ふっくらとした胸を手で包み込んだ。やんわりと、しかし時に強く揉む。乳首を捻るとアレンは声を上げて、キスから逃れてうめいた。

「や、やめて、下さい、師匠……こんな所で」
「俺が誰にも見えないんでホッとしてただろう、馬鹿弟子」
 クロスは低くアレンの耳元で囁いた。

「ち、違いますっ……あっ、やっ…」
「どうせこの喧噪、物陰だ。誰にも気づかれないと思わないか?」
「お、思いませ…ん。やだ、師匠………やめて…」
 だが、クロスの手は胸から離れない。男のアレンではありえないふくらみを丹念に味わい、その溶けそうな柔らかさを堪能している。真っ赤になった耳たぶを噛みながら、親指が器用にボタンを外す。
「だ、駄目…」
「じゃ、やめようか?」
 耳たぶをきゅっと噛まれた。
「んんっ!」
 アレンは目をギュッと瞑った。快楽に弱くなった体がアレンに屈するように諸手を上げて勧めている。だが、アレンはチラリとカジノの奥に目をやった。彼らが少しでもこちらに視線を向けたらと思うと気が気ではない。


「どうだ?」
「あ……」
 やめましょうという言葉は何故か舌が縺れて声にならない。それでも、懸命にクロスから逃げようとした。今ならまだ止められる。師匠の馬鹿!と罵りながら、少しばかり上気した顔で席に戻れる。


 だが、その瞬間、乳首と花びらに刻み込まれたペンタクルが狂おしいほど疼いた。


「ああんっ!!」
 アレンは度を失って、クロスにしがみつく。乳房をクロスに自分から押しつける形になってしまったが、疼き続けるペンタクルの快感に酔わされてどうにもならない。
「どうした、アレン? 皆に気づかれるぞ?」
 クロスは耳元で笑っている。幾度も調べ尽くした体だ。何が起こったか、とうに察しはついている。便利な体になってくれたものだ。
「し、師匠…師匠…」
 アレンは喘ぎながら、クロスを見下ろした。涙目になっている。促すようにペンタクルはアレンに疼きを送り続けていた。まともに思考できない。これをどうにかしない限り、クロスの膝の上から動く事もできなかった。
「まだ、やめて欲しいか?」
 わざと優しく問うてやる。アレンは必死で首を振った。
「どうして、欲しい?」
「噛んで……メチャメチャに掻き回して…下さい…」
 アレンの舌が震えた。前は恥じらいが邪魔して言えなかった言葉が、呪われて以来、安々と口をつく。我に返った後は気が狂う程恥ずかしいのに、今はこれをただどうにかして欲しいだけだ。
(師匠が悪いんだから)
 アレンはそう思った。思いたかった。
 でも、為す術もなく、自分から片膝を上げ、足を椅子に乗せていた。





「あっ、ふっ……うっ」
 声を上げぬ為、アレンは必死にクロスの団服の襟を噛んでいた。時折、鋭い快感が突き上げてきて思わず口を放しそうになるのを何とかこらえる。だが、いつまで理性を手放せないでいられるか解らなかった。宿のベッドでは、意識を飛ばしてしまうのが日常茶飯事だからだ。
「馬鹿弟子、もうちょい、足上げろ」
 クロスの手がスカートに潜り込んでいる。その指は花びらから秘丘の突起へと何度も往復を続けていた。優しく擽るように。乳房に与えられる愛撫に比べ、ややもどかしい。つい腰を擦りつけてしまう。
「がっつくな」
 鼻で笑われた。アレンはムッとする。中身は女ではないのだから、乱暴にしてくれてもよいのに。
  愛人達にもこんな手順なのだろうか。こんな場所で行為に耽るのだろうか。そう思うと何となく面 白くなかった。
 自分だけは違う風に抱いて欲しかった。愛人なんかになるつもりはなかった。
 愛人で終わるつもりもなかった。

「さっさと入れてくれて…いいんですよ。平気です、から」

 クロスは唇を曲げる。
「俺はな、排泄行為なんぞする為にお前を膝に乗せる気はないんだ」
「でも、イヤです」
 アレンはふて腐れたように首を振る。理性を飛ばして、霰もない声を上げるのだけは嫌だった。それに余り快感を感じて、腰を抜かしてしまうのも御免だった。そうでなくても、体の奥底がジンジンして、疼いて、気が抜けそうになっているのに。
「知るか」
 クロスはアレンのパンティーを指で摘んだ。ドレスと同じ黒いシルクの布を縦に一文字になるようギュッと絞る。その部分をアレンの中心に沿って擦り上げた。
「ふうう………っ!!」
 アレンは悲鳴を必死で押し殺した。慌ててクロスの手を押さえようとしたが、キツイ布の締め付けと擦り具合は思わぬ 快感をもたらした。布が花弁を擦り上げ、往復するたび、アレンの体は面白いようにうねる。
 クロスはその反応に満足しながら、充分愉しんだ胸の重みから離れて、脇腹へ背中へと愛撫を移した。指をさわさわと優しく、だが、充分意識させながら、背骨に沿って滑り降ろす。背後から少女の腰の窪みに指を入れた。アレンの秘奥がキュッと締まるのが感じられる。
「あ…はぁ…」
 パンティの中心に指を押し込むと、今まで入り口までで止まっていた指がすんなりと半分入った。グリッと回し、秘豆を摘む。クリクリと動かした。
「あんっ…やっ、ダメ…」
 
アレンの声が甘くとろける。くぐもった息が絶えず、クロスの耳たぶをくすぐった。
 柔らかな猫耳を優しくしゃぶり、そっと噛む。そのたびにアレンの耳がぱたぱたと動くのがかわいい。スカートの下でくねっている長いしっぽの根本をキュッと掴んだ。

「はうっ、やだっ! 駄目です、師匠!」
「いやらしい身体をしやがって」
「んんっ……ん!」
 違うという風に首が弱々しく振られる。
だが、熱っぽいまなざしと鼻息が荒いのでは説得力がない。アレンの否定を笑い飛ばすように指をグッと突き込む。

「ふううっ!!」

 アレンの身体が硬直した。これだけでイカれては面白くないので、決定的な刺激は与えない。段々恨めしげな視線になっていくのを、ニヤリと笑みだけで返し、アレンを一層引き寄せた。指を入れられたままの思わぬ 刺激に少女は切なげに喘ぎ声を上げる。もうアレンの身体は支えがなければ、床に崩れ折れてしまうだろう。
 クロスは布で刺激するのを止めて、直に指を中に滑り込ませる。もうそこはびしょびしょに濡れていた。高価なシルクのレースがアレンの愛液でトロトロに汚れている。クロスの指は秘丘の突起をなぶってから、アレンの中心に滑り込んだ。アレンの喉がヒュッと鳴る。
「あ、んんっ」
 軽く入れただけなのに、指はツブリと呆気ないほど簡単に中に溶け込んだ。アレンが自分からグッと腰を突きだしてくる。


「アレン」


 低い声。深い響き。それがアレンの尾てい骨を震わせる。いつも腹立たしい、憎たらしい、うっとおしい声が何故こんなにも自分を感じさせるのか。彼に抱かれているのだと、満足を覚えてしまうのか。それがアレンには解らない。解りたくもない。
 今はまだ。


 それでも体はせっかちに動いてしまう。クロスを求めて、クロスを感じたくて、切ないほどの衝動が溢れ返る。それに伴って沸き上がる感情を必死で見ない振りをする。

 後で考えよう。終わった後で考えよう。自分は呪われている。マナだけじゃ飽きたらず、変なアクマに女の体にされてしまった、これは罰だ。止めどない快楽も、押し寄せる熱も全部罰だ。償わないといけないのだ。その為にこんな感情に揺さぶられているだけなのだ。快感に誤魔化されているだけなのだ。
 だから、終わって正気に戻ってから考えよう。
 自分ほど、愚かな間抜けな子供はいない事に。


「あんっ、あんっ、あんっ」
 襟を必死で噛む。くぐもった声が襟の隙間から漏れる。唾液がクロスの襟を愛液のように汚しているがかまうものか。明日、洗えばいい。この心までみんな。消えてなくなるまで。
 ぐちゅっぐちゅっと水音が聞こえる。自分の足の間から、恥ずかしい位に大きな音がする。1本だけの指でなくて、もう2本目が自分の奥に進入を繰り返している。3本目。クロスの手が激しくなる。どうしようもない位 、激しく動いている。まるでそれがクロス自身であるかのように。
 それなのに、アレンはみっともない程、クロスにしがみつき、喘ぎ、自分を見失いつつも、それに心から満足し、充足しきって身を委ねている。
 粘膜がクロスの指を欲しがって泣いているようだ。力が入らない。クロスに抱きかかえられているのを感じる。

「あっ!」

 抜けた拍子に口が襟から離れた。ゾッとする程、甲高い自分の声とは思えない声が喉から迸る。その口をクロスは塞いだ。舌が絡まり合う。クロスの手が動き続けている。揺すられている。味合わされている。腰から下はもう自分のものではない。気持ちいい。もっともっと感じたい。
 酸素を求めて、意識が朦朧としてくる。細胞が弾けていくのを感じる。脳裏が白くなる。
 グリッと抉られた。
「んんんんっ!!」
 アレンの体がビクビクッと震えた。


「師匠……」
 アレンはクロスの喉元に顔を埋めて果てた。
 まるでクロスの匂いの中に埋もれたいというかのように。

 続く


 これからやっとティキ様登場。
 やれやれ。
 

 

 

 

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