「あの子、かわいいね」
（この作品は全て「目伏せ」「匿名」でお送りしております）
「……はい、次の方、どうぞ」
「こんばんは、あれ……た……」
「シッ、これは匿名番組だから。私の事は……そうだな。増田さんとでも呼んでくれたまえ」
「それって全然匿名じゃないですけど」
「いいんだ、Ａ君。で、今回、君の悩みは何だね」
「はぁ、兄の事なんですけど」
「ああ、いたね。ちっこいのが」
「キャラクターをすぐ連想するような表現は控えた方がいいと思います。特に兄は地獄耳ですから、何処から走ってくるか解りません。
まぁ、その兄の事なんですけど、ちょっと最近、僕に対する干渉がひどくて」
「そんなもん昔からじゃなかったかね。いつになってもＡＡＡＡ、未だに朝になる前に帰ってしまう。全くヤる前に目覚ましをセットする奴なんか、はが…いや、Ｈくらいだ。ムカツくから、わざと壊れた目覚まし置いてやったら、翌朝、右手どころか、左足でキックもらったよ。いや〜、効くな、あれは」
「何ですって!?」
「いや、こっちの話だ。で、君への干渉というのは？」
「……話をそらしましたね。
それで兄さんなんですけど、僕が何かに関心持つと、やたらに難癖つけるんです。僕が腰布買おうとするとデザインがダサイとか、色が悪いとか。花はリゼンブールの方が綺麗だとか。人がいる時、鼻歌も歌うな、とか。
仔猫拾ってきた時なんてヒドイんです。最初の内はミルクの匂いがするからイヤだとか、また捨てる時かわいそうだろとか言ってるんですが、その内、俺より仔猫の方が好きなんじゃないかとか、俺の方をもっと撫でろとか、わざと服を全部脱いで、僕が撫でてやるまで後を追い回すんです」
「…………それは悩みかね、ノロケかね」
「悩み相談なんだから、悩みに決まってるでしょう、増田さん。
兄さんは昔から自分が一番！て人だから、僕にも一番であって欲しいのは解るんです。僕は本当に兄さんが一番なんですから。
でも、僕って視覚と聴覚だけじゃないですか。僕は色々感じたいんです。ドキドキしたいんです。鎧でなくて、人間だって事忘れないでいられるのはそれだけなんですから。
だから、花を見たら綺麗だねとか、お菓子を見たらおいしそうだねって言いたいんです。でも、大抵、兄さんは生返事しかしてくれません。錬金術の事しか考えてないみたいですけど本当は違うんです。
『兄さんの方が綺麗』とか『兄さんの方がおいしそう』と僕が言うのを待ってるんですよ。やんなっちゃいますよね」
「本当はそう思ってるんじゃないのかね、Ａ君」
「あ〜、まぁそうですけど何度も言ってるとありがたみがないじゃないですか。増田さんはどうなんですか？」
「そうだな、けなす方が反応するが、たまに甘やかした方がすぐトロケるな、根が単純だから」
「女の人をわざとけなすんですか!? それは…高級テクですね。ホー…Ｈさんにもそうするんですか？」
「まさか。即時射殺される。まぁ、けなすのはＨに対してだけだな」
「だから、Ｈさんでしょ？」
「いや、私の例はいいから。今は君の悩みだろう」
「そうなんです。で、先日、通りかかった街がお祭りで女の子達が凄くかわいい民族衣装を着てたんです。特に金髪金瞳の女の子で凄くかわいい子がいて、僕『あの子、かわいいよね』って言ったんです。
そしたら、もう兄さんてば、烈火の如く怒ってしまって……。僕が何を言っても聞いてくれないんです！ お前は当分外に出さないって、僕の腰布全部隠しちゃったんです。ひどいです！」
「そりゃ、怒るだろうなぁ……」
「た……増田さん！」
「君は兄さんにその民族衣装を着せてみたいと思ったのかね。それとも、その子が好みだったのかね。その子は兄さんに似ていたのかね」
「……………え〜、全部、です」
「……はぁ〜。君も重症だな。まぁ、Ｈに女装させると処女狩りみたいでゾクゾクするが」
「はい？」
「で、君は何とか兄を誤魔化してここに来たって訳か」
「いえ、あんまり腹が立ったんで、兄さんの腰が抜けるまでヤッてから来ました」
「………………………」
「………………………」
「……………………君は怖いなぁ」
「そうかな？ 人の弱みにつけ込む増田さんよりマシだと思いますけど」
「人聞きが悪いな、君も。じゃ、今頃兄さんはベッドから一歩も動けないのかね」
「まぁ、当分は。トイレにも一人じゃ行けないと思います。あ、いけない、僕、そろそろ帰らなくちゃ」
「その格好でかね？ やっぱり腰布がないと町中は恥ずかしいだろう。Ｈさん、いや、エリザベスかジャクリーンに頼んで一緒に買いに行きたまえ」
「そうですね。ちょっと位待たせるのもいいかな。兄さんにも少しは懲りてもらわなきゃ」
「そうだね、子供にはお仕置きが必要だよ」
「どうもありがとうございます。悩みを聞いて戴いて。では」
「どういたしまして。
やれやれ、仲がよすぎる兄弟にも困ったもんだ。
………………どれ、トイレにも行けない子供のおまるでも手伝ってきてやるかな」エンド
パートタイムラバーその後といったところ(^^;
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