『団 服』

 

 コムリンが教団本部を半壊させて三日目の朝、食堂でいつものように大量 の食事を摂取していたアレンに、自分は既に食事を終えたリナリーが声を掛けてきた。
「おはよう、アレン君。」
「おはようございます。」
 ごっくんと口の中にあるものを嚥下し、リナリーの方を見上げるアレンにはまだ幼さが残っている。 心の中で『可愛い』と一つ年上の少女は呟いた。
「あのね、食事が終わったらコムイ兄さんの部屋に来てくれるかな。」
「任務ですか?」
「ううん違うの。」
「違う?ま、まさか僕の左手の治療じゃないですよね?」
マーテルの任務で負傷した左手は、既に治療という名の修理が施された筈・・。
 
恐る恐る目の前の少女に問うと、苦笑しながら彼女は応えた。
「そんなに怯えないで。治療じゃないわよ。でも大切な用事だからね。」
  手を振りながら食堂を後にするリナリーを見送り、少しテンションの下がった気分で食事を終えると、アレンはゆっくりと立ち上がった。

 


「アレンです。」
「開いてるよ。入って。」
コムイの部屋の扉を開けると、そこには部屋の主のコムイと妹で助手のリナリー、そして見慣れない女性が一人、アレンを待ちうけていた。
「アレン君、こちらに座って。」
  リナリーがソファーに手招く。
「あのぉ。」
  コムイの顔を窺うと、
「今日はね、遅くなってしまったんだけど団服を誂えるのに、キミの希望を聞いておこうと思って来てもらったんだよ。」
  いつもの笑顔で言う。
「えっ?希望?」
「そう。エクソシストの着る団服は各人の好みに合わせて誂えてあるのよ。」
  コムイの話を受けてリナリーが補足する。


「でも先日もらった団服は?」
「ああ、あれね。あれはキミのオーダーに合わせて誂える時間が無かったから、神田君の予備の団服を補正して着てもらったんだよ。だから、少し大きかったね。」


  事も無げにコムイは言うが、アレンにとってはかなりショックなことだった。 自分が教団本部に来て間もなくの任務だった。だから団服をアレンに合わせて作る時間が無かったのは分かる。他のエクソシストのものを流用するのもわかる。それが何故選りによって自分を嫌っていると思われる彼の物なのだろう。
  アレンの困惑に気づいたように、コムイは言った。
「体型が一番近いのが神田君だったんだよね。」
「このこと神田は、神田は知っているんですか?」
  自分が着用する筈だった団服を嫌いな奴が着るなんて、神田にとっては許しがたいことなのではないだろうか。そう思うと少し心が締め付けられる。 自分は彼のことを嫌いたい訳ではない。少しづつでも歩み寄りたいと思っているのだ。


「ああそのことだったら、大丈夫だよ。神田君に直接了解もらったからね。」


  コーヒーをおいしそうに口にすると、コムイは微笑んだ。
「神田が了解・・・したんですか?」
  信じられないという顔のアレンに、リナリーが笑う。
「いくらあの神田でも団服の一枚や二枚で、目くじらたてないわよ。支給品だし。」
「で、でも、神田は僕のこと嫌いだって・・・」
「嫌い?神田がアレン君のことを?」
  不思議そうにリナリーが問う。 アレンは言葉ではなく頷くことで返事をした。


「私はそんなことは無いと思うけどな。」


 リナリーの言葉に、アレンは驚いたようにその花が綻ぶかのような笑顔に見入った。
「どうしてそう思うんですか?」
「う〜ん、女の勘?」
「女の勘・・・って」
  脱力してしまう。
「アレン君、女の勘をバカにしないで。」
  ふふふと笑う少女の背中に、なんだか黒い羽と尻尾が見えたような気がしたアレンだった。



「そろそろキミの団服のデザインについて決めたいんだけど。」
コムイのその言葉を待っていたように、待機していた女性がデザインブックとメジャーを手にアレンに近寄った。
「あ、すみません。そうでしたね。」
「ねぇアレン君はどんなのが好みなの?」
「基本的には神田の団服みたいな感じで良いんですが、フード付けてもらえますか? あーそれと後ろにスリットが入っていた方が動きやすいです。」
  アレンと一緒にデザイン画を覗き込みながら、リナリーが言う。
「ベルトはどうする?この間はサイズ直しの時に位置が合わなくて外したんだけど。」
「ベルトですか?いらないかな。」
「そうよね!アレン君のにはベルト無い方がいいわ。その方が可愛いもの。」
  本人以上にリナリーは熱心だ。


「でも神田が残念がるわね。」
  何事かを思い出したようにリナリーは呟いた。
「何をです?」
「せっかくアレン君と団服がおそろいだったのにね。」
  にっこり微笑むリナリーに、頬を赤く染めたアレンだった。

エンド

またまた橘 あおいちゃんから戴き物です〜v
アレンたんの2巻の団服って、神田のお下がりだったのね。
神田の汗とか匂いとかついてるのねvえへえへv
あおいたん、嬉しいです〜vありがと〜v

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