「空気力学と少年の詩」 11

 

(俺はあの時みたいな交わりをしたくて、匡平を誘ってんだろうな)

 簡単に神が降りるとは思ってない。ただの模倣だ。
 でも、匡平は匡平だった。
 だから、多少のリスクはあっても、どうしても二人の交わりは激しくなりがちになる。
 怒りや嫉妬は仮面を外すには最適だ。
 今、阿幾を責め苛んでいるのは、いつもの草食系の匡平ではない。一匹の雄だ。
 かつての匡平には程遠かったが、それでも阿幾は満足だった。
 匡平だからいいのだ。他の誰とも比較すら出来ない。

「…っく、ふ…う…んん」
「気持ちいいだろう、阿幾?」

 阿幾は返事が出来なかった。口には再び一杯に匡平のものをしゃぶらされている。
 匡平は靴を片方脱いでいた。その指が阿幾の陰部を握っては擦り上げる。

「うっ…うう…っ!んんんっ!」

 阿幾の体がビクビクッと跳ねた。細い指とは違う太さと強さに苦しい程の快感が生まれる。
 夢中で匡平のものをしゃぶると、今度はバイブを足の親指でググッと器用に回され、引っ張り出されてはまた挿入を繰り返す。

「んんんんー…っ!」

 阿幾の口から飲み込みきれない唾液と体液が零れ落ちた。
 苦しさと快感が混ぜこぜになって、まともな思考が出来なくなる。

「おっと、放すなよ、阿幾」

 喉の奥まで押し込まれる。息が出来ない。思わず涙がこぼれる。
 だが、その収縮が気持ちいいのか、匡平は頭を掴んでグッと押し付けてくる。
 同時にバイブの律動が激しくなった。

「うぐ…っんんんっ!」 

 掻き回され、いい所を抉られて目が眩む。
 こんなひどい事にされてるのに気持ちいい。
 体が突っ張った。絶頂が駆け上ってくる。
 男達に輪姦され尽くした体は、もう射精する余力はない。
 だが、痙攣する体内と浮力感が自分が達したのだと教えてくれた。
 匡平に抱かれてるだけでイッてしまう。そんな体になってしまった。
 同時に匡平の腰がブルッと震えた。
 口一杯に匡平の味が広がる。
 全部飲み込むまで匡平は許してくれなかった。
 匡平が手を離すと、阿幾は吊るされたまま、グッタリとなる。涙がポロポロと頬を伝った。

「阿幾…」

 閉じかけた足を匡平は乱暴に押し開き、萎えたものをまさぐった。
 阿幾は身を捩じらせる。鈴口を擦られ、小さく喘いだ。
 体は疲れ切っているのに、体はまだ貪欲に齎される快感を拾い集めようとする。
 胸の突起に触れ、首筋に口付けながら、匡平は甘く囁いた。

「そろそろ、本当の俺が欲しいだろ、阿幾?」

 こくこくと阿幾は頷いた。バイブなど所詮偽者だ。

「匡平を…感じたい…。早く…」
「いい子だ」

 うっとりと口付けられた。
 いつもこんな生意気な口を叩かなかったらかわいいのに…とか独り言を言っている。

(生ぬるい抱擁なんか、俺達にはいらないんだよ、匡平)

 内心おかしかったが、余計な口をきくのも億劫だった。

「足を開け。腰を少し上げろ」

 命じられるまま、腰を浮かした。
 匡平はわざと楽しむように、ゆっくりとバイブを引き抜いていく。

「…くぅ」


 括約筋すら消耗している。
 長く開けられていた秘孔は閉じる事も忘れて、真っ黒な孔を開けたままだった。
 散々弄られた入口は熟れたザクロのように紅い。
 イッたばかりで痙攣する奥から溜まっていた男達の精液がトロリトロリと溢れ出てくる。

「凄ぇ…阿幾…お前、凄いエロい」

 匡平はその開きっ放しの穴を驚きつつ眺めた。
 匡平の熱い吐息に感じたのか、ひくんと揺れる。
 急速にヒクヒクと収縮を繰り返しながら閉じていく。

「おっと…」

 完全に閉じてしまう前に、匡平は指を二本ねじ込んだ。

「…ひゅ…っ!」

 阿幾は思わず息を吸い込んだ。指を動かされると、悩ましげに瞳が揺れる。

「奴等のを全部掻き出さないとな」

 弄くり、掻き回すたびにコポリコポリと精液が漏れてくる。
 匡平は軽く舌打ちした。

「…ったく、あいつら何回ヤッてんだ」

 詩緒が一生聞く事のないだろう暗い声で匡平が吐き捨てると、阿幾は薄く笑った。

「もう…いい。匡平、来いよ」

 匡平は頷いた。
 もう限界だ。
 足を抱え上げ、怒張したものを阿幾にあてがう。
 すっかり柔らかなそこは殆ど抵抗もなく匡平を受け入れた。
 が、匡平を感じ取った途端、粘膜は甦ったように匡平に纏いつく。

「…うっ! あっ!」

 まるで輪姦もバイブでの責めもなかったように、秘奥が激しくうねった。
 中に導こうと蠕動する。
 それだけで匡平は達してしまいそうになり、必死にこらえた。
 ぐちゃりと結合部が音を立てる。

「凄…っ! 相変わらず凄いな。お前の中…手加減しろ…よ」
「ハハ…言っただろ。俺は…匡平でしか…感じないって…」
「本当は凄い…淫乱じゃねぇの?」
「匡平限定で、な…」

 切れ切れの言葉で囁き合い、舌を絡ませる。
 阿幾の体は、とうに限界は超えている筈だ。
 多少、馴染むまで待ってやった方がいいのだろうが、もう挿入れた瞬間から二人の腰は動き始めていた。
 散々煽られたせいか、二人共余裕がない。
 ぐちゅぐちゅと音を立てて、キツく収縮を繰り返す結合部からは、掻き出し切れていない白濁が絶えず零れ落ちた。
 匡平は阿幾の腰に激しく打ち付ける。
 前立腺をわざと避けて中を愉しむより、今はひたすら阿幾を貪り尽したかった。

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