「笑顔 1」


 この金髪の少年は、いつも私を睨んでいる。
 何か私は悪い事をしたか?
 何かカンに触る事を言ったか?


 そりゃ、多少からかったし、冗談も言ったし、私情を捨てて任務も与えた。
 でも、私が皮肉屋な事も、人が悪い事も長年のつき合いだ。もうとっくに解っているだろう?
 国家錬金術師ともなれば、子供といえど一人前の扱いを受ける。賢者の石の探索を黙認しているのだから、多少の人使いの荒さも当然だ。
 子供扱いするなと、まなじりをつり上げるのは、いつも君の方だぞ、鋼の。

 

 なのに、何故、君はいつも怒ったような顔で私を睨むのかな。
 挑みかかるような目をするのは、何故かな。  
 それなのに、たまに君は何とも言えない顔で笑う。私のほんの一言で、私すら意識してない一言で、雲の切れ間からこぼれた日差しのような笑顔で、一瞬だけ笑う。


 その表情に私が息を詰まらせる事を君は知らないだろう。  
 その顔をまた見たいと、焦がれるような想いで、理由を付け、部屋に呼び出すか、君は知らないだろう。  
 知ったら、君はもうあの笑顔は見せてくれないかも知れない。
 だから、睨んでいろ、鋼の。
 私に気を許したりするな。
 誰にも、弟にすら見せた事のない表情を私の為に取っておけ。

エンド


掲示板1発書きSS。
執着が愛情の行く末なら、こだわりは愛情の始まりだと思います。
要するに、気になり出したら、それは恋だよ、大佐。

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