「下校途中」

 

 最近、下校途中はいつもこうだ。
 先輩が『いつも顔貸して』と言ってくる。用件が解っているのに、わざわざついて行く馬鹿もいないだろう。それを無視すれば、路地や人気のない場所で待ち伏せされる。男もそうだが、女も暴力をふるう時は何故集団になるのだろう。

「そのいつもすました顔が気にいらないのよ! ちょっと綺麗だと思って!」
「そうよ、お高く止まって、何様のつもり!?」
「あなたなんかがフィオリーナ様なんかと、お話していいと思ってんの!?」


 神田はその雀どもを醒めた目で見つめた。常にアメデオを肩に乗せた『女元帥』とあだ名される最上級生には狂信的な取り巻きが多い。神田は誰とも親しくした覚えはないが、こういう狂信者は誰にでも噛みついて、女元帥に尽くした気になりたいだけなのだ。それにいちいちつき合っていてはかなわない。


「うっさいわね」


 神田は一言呟いた。
 女子達がざわめく。彼女達の形相が鬼に変わる。
 後はお決まりの展開だ。神田だけが傷一つなく立ち、彼女達が負け犬の遠吠えを残して去っていくまで時間はかからなかった。

 


「行くわよ、神田」
 頃合いを見計らったのか、神田の背に声がかかる。
 振り向くと、同級生の二人が立っていた。デカイのとチビ。生徒会長のコムイの差し金だろう。万が一があると困るという奴だ。昔から同じクラスで、神田の実力は知ってるし、気心も知れてるから、本当に危なくなければ、わざわざ神田の手助けはしない。
「全く邪魔ねぇ、毎日、あんな事やってんの、神田」
 チビが呆れたように負け犬達の背中を眺めながら言った。
「知らねぇよ」
 神田は苦虫を噛み潰したように舌打ちした。
「何? イライラしてるの、神田」
 デカイのが目を細めた。神田は大抵機嫌が悪いが、今日は格別だ。彼女達を鮮やかに追い散らして、気分も少しは晴れたかと思ったのに。
「さすがに毎日でうんざりしてんのねぇ。大変だわね、神田」
 チビが愉快そうに笑った。

 


「……………生理痛が痛ぇんだよ」

 

 神田が青い顔でボソッと呟いた。二人はハッとして顔を見合わせる。

 

「マッ! だから、機嫌悪いんだぁ」
「やっだぁ。出血が多いの? 神田って前から低血圧だもんねぇ。婦人科に行ってみたら? 最近、若い子にも子宮筋腫が多いんだってよ?」
 神田の顔色が変わる。

 

「あんなスケベ椅子、二度と座れるかぁ!」

 

 ガシガシとブーツが石畳を踏んだ。
「パンツ脱いだまんまで、椅子が自動で腰より高くせり上がった上、あ、足がガバッと思い切り開かされて、指、グリグリアソコに突っ込まれんだぞ!
 に、二度とゴメンだ!あんなの!」


(お、俺はまだ処女なのにっ!)


 神田の横顔にそう大きく書いてある。二人はそれを見て溜息をついた。
「もう行ったんだぁ」
「大変よねぇ、神田も」
 どうりで今日の神田の動きに少しキレがなかった訳だ。
(だから、コムイが『万が一に』ってあたし達をつけた訳か)
(コムイは神田に甘いもんねぇ)
 神田はそうは思ってないだろうが。
(ま、当分、二人で神田を守ってやりましょ)
 二人はこっそり目ばくせして、肩をすくめた。

エンド

神田レディース。
余りにもあの三人が「じょしこうこうせえ」ぽかったんで、大笑い。
女体化はやらない主義だったんですが、あんまりマンガがまんまだったんでつい。エヘ。
女元帥を宮崎キャラ中最悪の下げマン少女・フィオリーナと呼ぶのはどうかと思いますが、マルコだともっと気の毒だし(でも、あの旅芸人一家を絶対意識してるよな、星野先生)
オチが自分ネタになってしまった(^^;
あの椅子に一度お座りになると、受けがどんな気分か味わえます。あな怖ろし。

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