「君の微笑むところ」
「ユウ」
そう名前を呼ぶのは俺の特権。
相変わらず、アレンは神田を神田と呼ぶし(二人きりの時はどうだか知らないが)リナリーも神田を神田と呼ぶ。
「なぁ、またアレンとデート? 今日は俺とど〜う?」
「バカっ! 何言ってやがるっ!? そんなのしてる暇ある訳ねーだろっ!」
ユウは髪を逆立てて怒る。真っ赤になって怒る。実際、俺達は任務が擦れ違ったり、コンビが変わったりで、滅多に一緒に本部にはいられない。
でも、恋人同士ってのは、どーにか時間をやりくりして会ってるもんだ。朝食時だけだろうと、廊下の片隅だろうと、二人きりでいる時はデートだと思う。
二言、三言、キスする時間さえなくたって、それはデートだ。
「アレンも大変だよな、ユウみたいなわがまま野郎とつき合ってさ」
「うるせぇな。あいつが勝手に付きまとうんだよ」
「まーだ、そんな事言ってる」
俺は笑う。ユウはそっぽを向く。
もう、それが単に照れだって事、俺は知ってる。
「ユウ、俺さぁ、お前が好きだよ」
俺は頬杖ついたまま、ユウを見つめる。
こういう時、ユウは何にも言わない。言えない。
息詰めて、頭の中グルグルさせて、かわいいよねぇ、ホント。
(バカだなぁ、ユウは)
人をかわすって事できなくて。全部まともに受け止めちゃって。
「う・そ。ジョークv
でも、アレンに愛想つかされたら、俺とつき合わない?」
「なっ、何だと、手前―――――っ!?」
やっと我に返るあたりが、ホントにかわいいよね、ユウってさ。
なぁ、ユウ。
俺はさぁ、アレンより出会ったのが前だったのに、ほんのちょっとだけ自分の感情に出遅れちまったよ。
観察ばっかりして、記録ばっかりして、人の心を見てる間に自分の心を見落としちまってたよ。
ホントにバカなのは俺だよなぁ。
「………あ」
アレンが立っている。俺達が任務から戻ってくるのを聞かされたんだろう。息を弾ませて、未だにちょっとだけアレンの呪いに馴染めない門番の横に立っている。
「ああ……」
神田の口元が、目が確かに笑ってる。優しく笑ってる。俺の横で、ユウの顔が確かに笑ってる。
「やだね、お熱いね〜」
俺はわざとユウを冷やかす。ユウはちょっと怒って、それでも当然のようにアレンの所に歩み寄る。
ユウと俺の距離が離れてく。
俺は笑う。笑おうとする。口元だけが精一杯笑う。
どうしても目が笑えない。
(なぁ、ユウ…………)
俺はユウの笑顔を見つめる。俺には出来ない事を。綺麗になっていくユウの笑顔を見つめる。
(なぁ、ユウ…………)
俺の想い。出遅れた俺の気持ち。
俺は一生喋らない。エンド
ラビは本当にいい男だと思います。とても器用で、色んな事が見えて、見えすぎる故に少し悲しい所も持ってるような、そんな部分が愛しいです。
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