「長い黒髪」(神アレ)

 

 いつも自分で髪を結い上げる。
 昔からそうやってきた。
 簡単だ。
 高く持ち上げて、片手で支えてから紐で縛る。


 だけど、最近うまくいかない時がある。
 俺がモヤシの事を考えている時だ。

 何故かもつれる。
 俺のいう事をきかない。
 静電気が起きて、跳ねて、もつれて、バラバラとほどける。
 とりとめのない俺の思考のようだ。

 

 好きじゃない。

 でも、考えてしまう。

 あいつの言った事。あいつのした事。あいつがしてしまう事。
 みんな、気に食わない。誰に対しても同じように俺が感じてきた事。


 でも、あいつが俺を無視する事。俺の事を忘れてしまう事。俺を考えないで一日を終える事。
 そんな事は考えられない。
 考えたくない。

 息が詰まる程、俺の事を思い出して欲しい。
 俺の事を見つめて欲しい。
 ずっとずっと側にいてほしい。

 俺は否定する。

 そんな考えを否定する。そんな望みにゾッとする。

 

 髪がもつれる。

 

 どうしたいのか。どうして欲しいのか解らなくなって、髪が俺の手からこぼれていく。

 あいつの視線がキライだ。
 あいつの匂いがキライだ。
 あいつの想いが重荷だ。

 

 俺は髪を結うのを諦める。
 窓際に立ったまま、手から髪がこぼれて腰まで流れていくのを黙って見守る。
 髪の毛が重い。
 最近、俺は髪の毛が重い。
 もてあまして、風に吹かせたままにしている。

 

 なのに、あいつが髪を伸ばし始めたのは、どうしてなのだろう。

エンド

ひさびさの日記一発書き。心より体が正直なうちの神田(何かやらしいな)。

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