「なんだよそれ」

 

「何してんだ?」
 エドはアルの肩越しに机を覗き込んだ。机の上に革手袋と指サックがある。その他に何枚も未完成の錬成陣が書かれたメモが散らばっていた。
「ああ、お帰り、兄さん。図書館で収穫あった?」
「いつものように、まぁまぁさ。また本、一杯借りてきたからな。
  今日はお前も司令部で何かやらされてたって?お前は民間人なんだから、余り軍部と関わらなくていいんだぞ?」
「だって、暇だったんだもん。資料集めや旅券の申請許可も優先でやってもらったお礼もあるし」
「そんなのいいんだよ。ただでさえ、危険で面倒臭い事件や調査を押しつけられてんだから」
「だけど、また街を半壊しちゃったじゃない、僕ら。始末書や報告書、兄さん提出してないでしょ?だから、僕はそれもやってきたんだけど」
 エドは言葉に詰まる。
「う………いいじゃん。ちゃんと錬金術で直してきたんだから」
「街はね。でも、犯人達の本拠地は堰を決壊させたんで直しようがなくて、放ってきたでしょ?証拠物件も全部、埋まるか川に流されちゃって、現場でハボックさん達、泣いてるらしいよ?」
「いいんだよ!軍人連中はそれが仕事なんだから!俺達に頼むのが悪い!給料分、働けってんだ」
「もう兄さんたら」
 アルは困ったように呟き、また机の作業に戻った。
「そういや、アル。何だよ、それ」
「うん。今日ね、書類作成ついでに、色々資料探しも手伝ったんだよ。でも、書類の枚数が凄くて。紙をめくるの大変だったんだ。僕の指に合う指サックなんてないでしょ?
 そしたら、たまたま大佐が通りかかってね。革手袋と僕の指を錬成したらどうだっていうの。僕の指、なめし革だから。
 きっとそしたら、兄さんも喜ぶだろうって」
 エドは首を傾げた。
「……? 何で俺が喜ぶんだよ?」
「うん。僕の指、指サックみたいにイボイボになって、きっと夜の時も使えるぞって…」


「あんのエロ大佐--------っ!!! 俺の純真な弟に何ちゅう事教えるんだ---------っ!!!」


 バーーーーン!!と凄い地響きを立ててドアが閉まった。
 アルが宿の窓から覗くと、砂煙を上げて、エドが司令部の方角に突進していく。
「……あ〜〜あ」
 アルは仕方なく机の上を片づけた。早く兄を止めないと、今度は司令部が半壊し、始末書が増える。エドは今度は絶対書かねぇと言うだろうから、結局、お鉢が回ってくるのはアルなのだ。
「でもさ、こんだけ実の兄弟でやりまくっておいて、今更、純真な弟もないもんだけどなぁ」
(兄さんは僕に夢を見過ぎなんだよ)
 アルは溜息をついて、部屋の扉を閉めた。

エンド

 

エドは傍目でもアホウな程、弟にメロメロだと思います。
大佐は楽しかろうが、回りは大変だ。
ゴジラが毎年夏に日本に来襲するように「鋼の錬金術師注意報」が 司令部には発令されるのかも知れない。
アルエドだけど、エドアル。

鋼トップへ   エドアルトップへ

55 STREET / 0574 W.S.R / STRAWBERRY7 / アレコレネット / モノショップ / ミツケルドット