「温もり」

 


神田とアレンは日の暮れた町外れに立っていた。
二人の休暇が珍しく重なったため、「息抜きしましょうよ」とアレンが誘ったのだ。
渋々と神田はアレンの誘いに応じた。
エクソシストとしての任務を忘れ、普通の人として歩く町並みは束の間の安らぎを与えてくれた。
心身共に疲弊しきっていたのだと思い知る。
様々な店を一軒一軒覗いたり、公園のベンチに腰掛けて買い求めたパンを齧ったり、そのパンくずを鳩に食べさせたり、穏やかな時の流れを満喫した。


「今日は本当に楽しかったです」


アレンは隣にいる神田を見上げて、にっこりと微笑んだ。
「そうか」
「また二人で出掛けましょうね」
「ああ。それはそうと随分暗くなったな」
「神田、手を繋いで下さい」
「あ?」
唐突なアレンの申し出に、神田は些か戸惑う。
「手を繋いで下さい」
「んな恥ずかしいマネ・・・」


「僕が迷子になってもいいんですか?」


すごい脅し文句もあるものだと、神田は感心したようにアレンの顔を見つめた。
確かにアレンは方向音痴だ。
今日だって、ちょっと目を離した隙にどこかへ行っていってしまい、ハラハラ(神田の場合どちらかというとイライラという感じだが)させられた。手綱でも付けておきたいと思ったほどだ。
もう宵闇迫るこの時間帯だと、道も分かりにくい。
逸れられると面倒だ。
仕方ないという素振りを装い、神田は自分の左手とアレンの右手を繋いだ。
アレンがぎゅっと力を込める。


「神田優しい・・・」
「しょうがねぇだろう」
ふふふとアレンが笑う。なんだか楽しそうなその様子に神田もまあいいか、と自分も一度ぎゅっと力を込めた。
繋いだ手は暖かくて、二人の心までも温もりを与えてくれた。

エンド

あおいちゃんから、かわいいSSSを戴きました!
うわ〜ん、超かわいい! あおいちゃん、べりべりありがとー!

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