「パートタイムラヴァー」(ロイエド)

 

「あーーーーーーーーっ!!!!!」

 

 エドはもの凄い顔で飛び起きた。
「うわーーーーーーっ!! やべぇ、寝過ごした! 何時!? 今、何時?
 朝じゃんかよ!!人の寝顔見てないで、何で起こしてくんないんだよ!?
 アルが心配してるっ! アルにバレるっ! 初めて外泊しちまったよ!
 まじぃ! アルに怒られる! どーしよー!やべぇやべぇ!あー、アルが心配してる。どーしよ、探してたらどーしよー。アル、大丈夫かな。変な奴らに絡まれてねぇかなぁ」
「初めて一緒の朝を迎えたっていうのに、朝のベーゼもなく、アルアルアルアル、君の頭には弟しかないのかね」
 ロイは呆れ返って少年を見つめた。
「何であんたと朝なんて迎えないといけねぇんだよ! アルは俺がいないと夜一人なんだぞ! あいつは俺とあんたの事知らないんだから、絶対色々探したり、困ったりしてるに決まってるんだ。
 だいたい、あんたが変な酒飲ませたり、妙な道具使ったり、縛ったり、繋いだり、色々するから時間ばっかりかかって、いつの間にか寝ちまったんじゃねぇか!
 何があったって、絶対帰るって言ってあるだろ! 俺はあんたなんか好きじゃないんだから!」
「あんなにアンアン言っておいて、悪いのは私一人か」
「一人だよ!! いたいけな青少年に普通やるかよ、あんな事! さっさと突っ込んでさっさと終わらせりゃいいじゃないか。あんたに抱かれてると虫酸が走るんだから」
(いたいけ、ねぇ)
 人体錬成にまつわる資料と、男同士の妙な意地の張り合いで弾みで肌を重ねてしまった。
 抜くだけで事を終わらせて、それだけでも充分エドに対する脅しになったのに、ああいう濃厚な時間の、感情の高ぶりは意外に油断がならず、言葉の押収とエドのどういしようもない濡れたまなざしに憑かれて、最後まで行ってしまった。
 その後、売り言葉に買い言葉。ロイはあれっきりで事が終わると思っていたが、エドは余りにも子供で、未だに資料が欲しければ身体を開くしかないと思いこんでいる。
 それを一々訂正するのもバカらしく、またこの子供が何処まで頑張るか見たかった事も関係を継続させた。
 何も知らない子供が、何事か教えるたびに羞恥の限りを尽くして見悶える様も、何だか聖堂を汚すような感じがして楽しかったからかも知れない。
 とはいえ、最近肌も馴染んできたし、少しは心を許してきたかと思えば、アルアルアルアル。
 夜道でもあの鎧を襲うような度胸のある奴はいないと思うのだが、エドにはアルフォンスが触れなば落ちんばかりの清純な乙女にでも見えるらしい。
 この関係を知られたくない!というのは解るが、昨晩は自分から求めてもきたし、濃厚なサービスに悦んでいたように見えただけに、ちょっと気に障る。
(都合が悪いとすぐ子供面するのはずるいぞ、鋼の)
「あー、参ったなぁ。俺、パンツ何処脱いだっけ? ああー、靴下がゴミ箱の中に入ってる!
 あー、パンツがねぇ。パンツ、パンツ!」
(浴室じゃないか?)
 とは、ロイは言わなかった。何となくそこまで言ってやる義理はない気がしてきた。
「あー、びしょびしょじゃん!このバカ大佐!あんたがシャワーしながら、ヤったりするから!もう!どーすんだよ!このままじゃ、すーすーするじゃんか!俺、もうパンツいらないから!捨ててくからな!」
 浴室で自分に対する罵詈雑言が木霊している。
 ののしられながら、パンツを捨ててかれる恋人ってどんなんだろう。
 尚もパンツだの、腹減ったの、アルだの何だか喚きながら、エドは部屋中歩き回って脱ぎ散らした服を見つけだし、外見だけでも何とか普段通 りの鋼の錬金術師になった。
 ノーパンなのを知ってるのは、私だけだが。
「あーあ、もう、これだからあんたんちに来るのはやんなっちゃうんだよ………何だよ、何ニヤニヤ見てんだよ」
 ギロリと見つめるエドの顔が何だか忌々しくて、むかついて、何か言ってやりたかった。
 エドの神経が一番逆立つような一言。  私を忘れないキスマークのような一言。
「いや…………かわいいなぁと思ってな」
 ミシっと顔面に右のパンチが沈んだ。
 鋼の右手。
 バーン!とドアが閉まった。

 

 

 職場に出勤すると、有能な金髪の副官が私を見て一言言った。
「昨晩はエドワード君とご一緒だったのですか?」
「……何故、解る?」
 私は自分を翻って見た。軍服は詰め襟だし、いずれにせよ、エドワードは絶対私にキスマークをつけていったりはしない。
「顔全体が陥没して、※印に見えます。へたなキスマークより解りやすいですね」
 私は溜息をついた。会議までに顔を復元しないと。今日の会議は大総統も出席するのだから。
「全く荒っぽいキスマークだ」
 つけて欲しいと望んだ自分も自分だが。

 

 それでも、エドは呼べば、また来るだろう。
 彼は私のパートタイムラヴァー。

エンド

おなじみの一発書き。こういう二人が好き。

鋼トップへ

55 STREET / 0574 W.S.R / STRAWBERRY7 / アレコレネット / モノショップ / ミツケルドット