「その理由」


 神田の剣が風を切った。
 巨大な蟲達がアクマを四散させる。


「お見事」
 ラビは巨大な鎚を肩にかついだまま笑った。
「お前がのろいんだ」
 神田はラビを一瞥して通り過ぎる。
「まぁね、ユウ、強いからさぁ。俺、何にも出番なしで終わりそう」
 ラビはのんびり後ろを歩きながら笑った。
「足手まといなら今すぐ帰れ。俺は一人で充分だ」
「そうでもないさ。向かい合わせの背中の方が戦いに死角が減るから戦いやすいじゃん」
 神田はラビを睨んだ。そうは言う癖に、ラビが今まで率先して戦った事はないではないか。アクマの攻撃があると解っている癖に神田の出方はどうかと、横目で楽しんでいるようだ。



 それが神田には気に入らない。
 敵の正体も見抜かぬ内に打って出るのは軽率だが、ラビは慎重よりむしろ神田の我慢を計っているように思える。
「……あんたは余程強いんだろうな」
 わざと嫌味を言った。
「真打ちが出るまで、力を温存しておく気か?」
「まっさかぁ。そこまで俺、自信ないよ。ユウが強いから見てる内に終わっちゃうだけ」
 ラビはクスクス笑った。
「でも、俺の前に出ちゃうって事は、まだ俺を信用してくれてないんだねぇ。それとも、俺の後ろに立つのがイヤ?誰かの背中を見るのがイヤか?」
 神田は黙ってラビを睨んだ。
「そんなにダメかい?」
「別に人と合わせたくないだけだ」
「ダメなんだ」
 ラビは肩をすくめる。
 神田は眉をひそめた。何でこいつはいつも歯に何か挟まったような物言いをするのだろう。非難するとか、拒絶するとか、はっきりすればいい。
 好きか嫌いか。黒か白か。神田はそういう風にしか相手の事を考えたくない。複雑にしたくない。



「誰かの背中を見て、焦ったり抜け駆けされたなど思わない。お前も少しまともに働いたらどうだ。口ばっかりの腰抜けか」
「俺の言いたいのはそんな事じゃないんだけどさ」
 ラビの口元が呆れたように笑う。
「じゃあ、何だ」
「ユウは誰も信じない。信用しない。本当さぁ、ユウ、お前さぁ、ダメになると思ってない?」
「何が?」
「誰かを信用すると、好きになると、自分がダメになると思ってない?」
「………………」
 神田の眉が険しくなった。だが、その一瞬前、虚を突かれた表情をラビは鋭く捕らえていた。軽く笑う。
「気付いてないとは、かわいいや」
 ケラケラ笑いながら歩き出す。
「手前ェ、ラビ! 笑うな!」
「いやいやいや」
 ラビはヒョイヒョイと高い岩場を飛び上がった。後ろから上がってくる神田に手を伸ばす。神田はその手をギロリと睨み、あからさまに無視した。
(んっと、かっわいい)
 ラビは口笛を吹き吹き、神田の後を歩き出した。

エンド

ラビ神田、大好きv早く原作でも組んでくれないかなv

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