「それ行け、アーチャー中佐  第1回」


 失礼、私はアーチャー中佐。
 アニメのオリキャラとはいえ、速見声だ。この少し地味目だが、クールな顔と共に世の腐女子達をキャーキャー言わせる自信がある。
 軍の階級はまだ中佐だが、ここまでのし上がるまでは勉強や追従何でもやってきた。情報部に入ったのも、この世は先に情報を握った者こそが実権を握るからだ。軍部は世の動向を真っ先に知り、先手を打つ事も出来る。また、権力者のほの暗い秘密を知り、それを利用して自分の地位 を急激に上げる事にもだ。君達も薄々察しての通り、私のバックに巨大な力がある。おっと、アニメがこれからどう転ぶか解らないから、その方の名はまだ証せないがね。
 さて、私はこのたび東部司令部方面に配属になった。以前、ここを担当していたヒューズとかいう男が何者かに殺害されたからだ。写 真や経歴を見たが、何処といって取り柄なし。かのイシュヴァール戦役にも従軍し、何を好き好んでか、情報部の癖にたびたび前線に赴いている。後方支援に徹していればいいものを器用貧乏という奴だろう。
 情報部内でも切れ者だという者、お調子者、ただの家族バカという者、噂は一定してない。だが、民間人の妻を娶った時点で出世の道など自ら断ったも同然だ。情報部内にあって、正体を知られぬ という事、多面性を持つというのは一筋縄ではいかない男の証拠だ。多分、見た目と違って、その下により多くの顔を持っていたのだろう。
 私は薄ら笑いを浮かべた。それでも、ヒューズは死んだ。2階級特進だろうが、人間は死んだらそれで終わりだ。私は失敗しない。ヒューズになり代わり、ファンの心をゲットしてやる!アニメショップでアーチャーカンバッチとか、アーチャーメモとかアーチャーポスターとか、主人公を差し置いてコーナーが出来るようなキャラになってみせる!
 ちょっと危険な目にあったら、キャー、アーチャー様危ない!とか、もう最終回まで3分の2位 しかないが、私が主人公の回が特別に設けられるとか、私のテーマが流れるとか早くなりたいものだ。検索にもアーチャー×ロイとかアーチャー×エドとか出来たりして。アーチャー総受けというのも人気のバロメーターの一つだろう。ちょっとくらい男の下で泣いてみるのも人気の証と思えば悪くない。アーチャーオンリーなんてのも素敵な響きだ。
 死んだ暁には盛大な葬式と「アーチャー追悼本」なんて……。



  ………いかんいかん、何を先走ってるんだ。それに死んだら駄目じゃないか。最初の出番だって、ちょっと興奮しすぎだぞ、わ・た・し。
 私は襟を正した。もうすぐ、私と東方司令部に向かう者がやってくる。何事も最初が肝心だ。多分、そのキャラと私が噂のカップルという事になるんだろう。
 ノックの音がした。
「入り賜え」
 私は書類から顔を上げ、鷹揚に立ち上がる。
 ドアの前には巨大な禿頭でヒゲの筋肉質の男が立っていた。敬礼する。
「失礼いたします。ルイ=アームストロング少佐であります。東部まで貴殿の護衛との任務を拝命されております!」
「……………うむ」
 私は強ばった笑いを浮かべた。
(新しいカップリング、か)
 ルイアーって、どんなんかな。
 これも一部に熱狂的なファンはいるけど、いまいち、カップリングが成立してない少佐へのスタッフの配慮かも知れない。
 い、いや、しかし、原作もヒューズの最初の登場はアームストロング中佐とだったしぃ。これも情報部の最初の洗礼と思えば……。
「さぁ、参りましょう、中佐殿!」
 巨体の少佐は強引だ。大きな顔が私に接近した。アーチャー、困っちゃう。
 い、いや、ここで隙を見せては、クールな私のイメージがダウンしてしまう!
「うぬ、じゃ、頼むぞ、少佐」
「はっ!」
 少佐は敬礼した。
 私はとにかく駅に向かう自動車に乗り込んだ。
 東部か。そこには鋼世界では空前の人気を誇る大佐と豆粒ドチビが待っている。
 新しい恋はこれから!
 い、いや、もとい!
 ふふふ、待っていろ。二人とも。
 何しろ私は天下無敵の速見声。
 アーチャー中佐が影の主役と呼ばれる日はもうすぐだ。

続く


 アニメ感想で御存知の通 り、私はアーチャー中佐のファンでは全くありません。何でこんなもの、一発書きしたんでしょう。多分、飽きて3回くらいで終わると思います。

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