「ベリーベリーストロベリー 6」

 

「んっ、んぁあっ。はっ、雪男…ぉ」

 燐は切なげに身を捩らせた。雪男に触れられている。
 うなじにキスをされ、服の上から撫でられる。それだけでこんなに気持ちがいい。

「…ひゃうっ!」

 雪男の手が絹のブラウスの下に潜り込んできた。
 直接、素肌に触れられる。
 胸の突起を擦られ、それだけで燐の身体は竦み上がった。

「あれ…兄さん。以前より感度上がってる?」
「うっせー…聞くな…あっ」

 羞恥と悦楽で頭が溶けそうだ。
 震えて逃げを打つ身体を抱きすくめられ、敏感になった肌に唇が滑っていく。
 そのたび、燐は甘い嬌声を上げた。

 子供の頃、幾度かじゃれ合いの延長みたいな関係を持った。
 双子なのに、お互いの体が違うのが不思議でならなかったのだ。
 触る代わりに触らせる条件で触り合いっこをした。
 雪男が燐のしっぽを何気なく握った時、燐が変な声を上げた。
 その時、真っ赤になって涙目で俯いた兄がかわい過ぎた。
 変な声を出すまいと我慢してる兄をもっと見たくて止まれなくなった。
 燐も余りに気持ちよくて、雪男にもっと触れよと言い、いつの間にかお互いに縋りついていた。
 精神的に好き以外の要素が混じったのは、あれ以来かも知れない。

 でも、やっぱりその行為は後ろめたかった。
 雪男が本格的に祓魔師の候補生として、兄に言えない外出をするようになってから、次第に雪男の方から遠ざけた。
 癖になりそうで、何となくしてはいけないと思うようになって、お互い忘れたフリをしていた。
 各々の夜の中で、自慰の相手が誰であるか口を噤むのが暗黙の了解になっていた。
 どんなにベッドが軋んでも、押し殺した声が聞こえても寝たフリをしてやり過ごす。
 それが兄弟間の礼儀だった。
 また始めてしまったら、今度こそ最後まで止まれないような予感がしたから。

 だけど、もう我慢しなくていいのだ。
 雪男は横たわった燐を見下ろした。
 必死に快楽に耐えている兄がいじらしい。
 せっかくメイド服を着ているのだから、戯れにご主人様と呼ばせてみたかったが、初めての時は対等でありたかった。
 自分の中で行為を急かせるニンフを抑え込んで、雪男は燐に口づける。

「兄さん…」

 雪男の指がそっと腹や臍を伝い、スカートに辿り着いた。
 これからの展開に少し燐は身を竦ませる。
 だが、雪男はすぐ奥には触れず、生足の手触りを愉しんだ。
 くすぐったくて、燐の太腿が緊張している。
 そのたび、燐のヘッドドレスがふるふると揺れた。

「…あ…あ…」
「ホントに女の子抱いてるみたい…」
「言うんじゃねぇ、バカァ…」

 震える燐の太腿に指を滑らせ、スカートの中に指を滑り込ませた。
 布越しに熱に触れる。
 燐はビクンと震えた。小さな悲鳴を上げる。
 雪男は満足そうに微笑みながら、指を絡ませ擦り上げた。
 パンティにたちまち染みが広がっていく。

「ふぁ…ぅ、イヤだ…」
「気持ちいい?」
「聞くな…って」
「だって、もうこんなだし…」
「言うなぁあ…あっ!」

 体がビリビリ震える。気持ちいい。
 何が何だか解らなくなる。
 全身が雪男を感じたいと敏感になっている。
 はしたないほど、しっぽが怪しくのたうった。

「ここも…欲しいんだよね、兄さん?」

 雪男はしっぽを二本指で挟んだ。
 キュッと輪を作って握ってから、しゅっと擦る。

「うっ、ああっ!やだ…ぁぁって!」

 しっぽから背筋へ電流が駆け上がった。
 しっぽの付け根がきゅうっと収縮を繰り返す。
 雪男は笑みを浮かべ、兄のものとしっぽを同時に擦り始めた。
 燐は耐え切れず、背を仰け反らせる。

「そ…っ、それ、らめぇぇええ…っ!やめろぉぉ…!」

 良過ぎて呂律が回らない。
 必死で雪男を押し退けようとするが、まるで力が入らない。
 抵抗しようにも、軽くしっぽを甘噛みされ、しゃぶられると敢え無く陥落した。
 随喜の涙がボロボロこぼれる。

「すっ、すんな、それ!バカぁ…! んんぁ、ふぅ」
「でも、凄いよさそうだけど。ホントにやめる?」

 舌を放して澄ました顔をする雪男がホントに憎らしい。

「お、俺の身体で遊ぶなぁ…っ!」
「まだまだこれからだよ」

 雪男はしっぽと燐のものを並べると、いきなり交互にしゃぶり始めた。
 燐の体が突っ張った。
 気の遠くなりそうな快感が突き抜ける。

「あっ、ああああっ! らっ、らめぇ…!雪男ぉ…っ!」

 燐の足の指が床を爪弾く。
 突っ張り、丸まり、床を滑っていくのを繰り返す。
 腰が勝手に揺らめいて浮いた。
 体の奥が熱くて、苦しくて、もっとして欲しくて言う事を聞かない。

「死ぬっ!死んじゃうって! しっぽ、もう舐めんなぁ…っ!」
「兄さんはホントしっぽ弱いよね」

 雪男はしっぽを甘噛みしながら、そっと燐の秘部に触れた。
 まだ何もしてないのに酷く濡れている。
 縁を描くように触れ、指を押し込むと、くちゅんと音を立てて半分以上飲み込んだ。
 くちゅくちゅと弄ると激しい水音を立てる。
 とろとろとスカートが透明な液で濡れた。
 二本目の指もすぐ飲み込む。

「凄い…まるで女の子みたい。へぇ、悪魔ってこういう体なの?」
「おっ、俺が知るかぁ!お前がさっ、触るからだ…ろぉ!」

 燐は真っ赤になってそっぽを向く。

「でも、凄いからさ。こんなに溢れてきて…。兄さんのココ、エロ過ぎる…」
「言うな…てぇぇ!」

 燐は固く目を瞑った。
 雪男の顔が恥ずかしくて見れない。
 あちこち熱が溜まって吐き出したい。
 その熱い情熱は腰に降りていく。そこから吐き出せと促す。
 その過程すら快くて溺れそうだ。

「あんっ、あっ、あう…ぅ」

 あられもなく声が漏れる。
 その上擦った甘い声がいかにも女みたいで恥ずかしい。
 ニンフは雪男の中にいるのに、まるで自分が憑かれているようだ。
 指が前立腺に触れた。
 それだけで滾った身体は限界だった。

「ふあっ…! んんんんっ!」

 ギュウッと雪男の指を締め付ける。全く制御が効かなかった。
 悪魔は快楽に弱い。
 そんな言葉を聞いた事がある。
 その頃、まさか自分がそうだと知らなかったから聞き流していたが、今、身を持って知らされる。
 雪男の愛撫の前に我慢など無意味だ。

「フフ…指だけでイッちゃったの、兄さん」

 雪男は燐の体液で汚れた自分の指や手を舐めていた。
 燐は眉を顰める。だるい身体で懸命に抗議した。

「汚いだろ…やめろよ、それ」
「どうして?兄さんの身体で汚い所なんか何処にもないよ」
「いっつも俺には手を洗えって言うくせに…」

 そう言いながら、燐の胸は幸せで痛い程だった。
 ずっと忌み嫌われてきた。
 悪魔の子。疎ましい人類の敵の落胤。

 なのに、雪男は自分を愛してくれる。
 生まれた時からずっと変わらない。
 無条件で受け入れてくれる。
 存在していいと言ってくれる。
 それがどんなに幸せな事か。
 だから、もし自分が悪魔と戦う理由を挙げるなら、雪男を守りたいからだ。
 父親を巻き込み、雪男を悲しませた。
 だから、もう二度と繰り返したくない。
 強くなって雪男を守りたい。昔みたいに。

「うぁ…っ!」

 また指がくちゅりと音を立てた。
 燐は思わず指を噛む。
 その指を優しく解いて自分の指を絡め、雪男は床に押し付けた。
 燐が涙で潤んだ目で見上げると優しくキスをくれる。
 その間も水音は止まらない。
 キスが自然と深くなっていく。
 雪男は先走りで濡れぼそった燐のものとしっぽを一緒に握り込んだ。
 一緒に扱く。

「んんん、ああああっ!」

 甘い衝撃に燐の身体は激しく跳ねる。
 体が痙攣して息が出来ない。

「あっ、くぅ! 雪男ぉ、雪男…もうっ!」

 切れ切れに燐は雪男を呼んだ。雪男は燐をかき抱く。

「兄さん、もういい?僕も…もう我慢出来ない…っ」
「うん…でも、ちょっと待て…よ」
「…何?」

 雪男は興奮した目で燐を見返す。

「さっきの女、まだお前の中にいるんだろ?」
「うん、いる…けど」
「そっか。ちょっと起こせよ。一人じゃ腰立たねぇ」

 雪男は頷いて、燐の上半身を抱き起こす。
 燐は微かに笑った。
 倶利加羅を握ると、いきなりサッと引き抜いた。
 燐から青い炎が立ち上る。

「俺、まだ怒ってんだ。ちょっと熱いけどカンベンな」

 いきなり、燐は雪男の胸に掌を押し付けた。
 ズン…と衝撃が雪男の体内を駆け抜ける。
 それはニンフも同様だった。
 安心しきって性交に没頭していただけに、完全に虚を突かれる。

「キャアアアアアッ!」

 女は魂切るような声を上げて、雪男の体から飛び出した。
 焼き殺される。
 恐慌に陥って、完全に雪男から離脱する。
 そこを一閃。
 燐は倶利加羅を薙いだ。
 ニンフは銀色の刃に切り裂かれる。
 同時に燐はチン…と刃を鞘に収めた。炎が消える。

「もう…びっくりした…」

 雪男は胸を見下ろした。
 青い炎は本当に刹那で身を焼きはしなかった。
 ただ、燐が触れた部分が赤くなってヒリヒリする。

「ごめん、雪男。熱かったろ?ごめんな?」

 燐は屈みこみ、ヤケドの跡を労わるように舌を這わせる。

「けど、俺、初めてはお前とだけでヤリたかったんだ。治療とかそういうの抜きでよ」

 その言葉と燐のチロチロ動く舌の動きだけで充分だ。
 雪男はゴクリと唾を飲み込む。

「ごめん、それ、反則」

 雪男は燐を押し倒した。
 燐の片足を持ち上げ、ズボンから自分のものを引き出す。

「うわ、でけぇ!おいっ、双子なのに、何でお前の方がデカイんだよっ!
 そ、それにそんなの挿入る訳ねぇっ!」
「大丈夫だよ…多分。最初はきっと痛いと思うけど」

 燐は焦った。思った以上に大きい。
 まじまじとそれを見つめる。急に実感がこみ上げてきた。

(ほ、本当にする…んだ)

「…いいかな?」
「お、おう! ドンと来い! お前のなら…怖くねぇし」

 強がっても声は震える。
 雪男は優しく笑って、燐の中にゆっくりと体を沈めていく。

「…うぁ…っ!」

 燐の目尻から涙が零れ落ちる。
 痛い?と聞くとフルフルと首を振った。
 だが、沈めるたびに指が雪男の腕に食い込んでいく。
 必死で耐える燐がいじらしかった。

「優しくするから」

 雪男は深呼吸し、再びなじませるように燐の体に没頭した。

 


「ああ、腹減ったぁ」

 燐は何度目かの弱音を吐いた。
 もう深夜だ。食堂も終ってしまっただろう。

「仕方ないでしょ。兄さんのせいで準備全部やり直しなんだから。
 ほら、早く終りたかったら手を休めない」
「うう…こんなに遅くなったのは、初めてなのに5回もヤッたせいだろ?」
「残り三回は兄さんがおねだりしたせいだけど」
「だってよぉ〜〜〜」

 燐はブー垂れながら、薬品を計った。
 悪魔の体の性欲は底知れない。
 初めてなのに、あんなにイイとは。
 5回やっても何ともない自分の体力と回復力が恐ろしい。
 仕事さえなければ、一晩中睦み合っていたかった。

(マズイ。癖になってしまいそうだ)

「炎以外も、俺、制御しなきゃいけないもんが増えたなぁ」
「そう?でも、僕は嬉しかったけど。兄さんが僕だけに淫乱なら」
「いっ、言うな〜〜〜」

 燐は真っ赤になった。
 思わずへたり込みそうになる。
 だけど、倫理観を重んじる雪男にしては珍しいと思った。
 雪男が見た目通りの優等生でない事を燐はよく知っている。
 二人でハードルを飛び越えたのはよかったのかも知れない。

「でも、ちょっと気ィ済んでよかった。…前みたいにお前の事守れたよな、俺」
 
 燐はニッコリ笑う。雪男は肩を竦めた。
 唇を寄せてくる。燐は目を閉じた。

「本当にちょっとだけ?」
「いや、一杯」

 燐は笑って、雪男の首に手を回した。

エンド

燐に子供の頃からしっぽがあると勘違いしてました(^_^;)
でも、子犬のようなのがあったらかわいいと思います。
二人の初めて話。ちょっとアルエドと幽静っぽくなってしまった(笑)

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