ウィンリィの家に着いた。生憎、デンは家の中にいるらしい。
「じゃ、俺は隠れているから、後はよろしくな」
「よろしくなって…やっぱりイヤだよ。やめようよ、兄さん」
「ここまで来て何言ってんだ。おーい!ウィンリィ、いるか?」
 エドはドアをドンドン叩くと、ダッシュで自分だけ家の門まで走った。置いてけぼりにされたアルは途方に暮れて扉の前に立ち尽くす。
「エドなのー?入っていいよ。鍵、開いてるから」
 ウィンリィの元気な声がドア越しに響いた。
(あああ…)
 アルは弱り切ってドアを見つめた。救いを求めるように兄を見たが、エドは厳しい顔で『行け行け!』と手を振るばかりだ。
(もう、知らないからね!)
 アルは仕方なく家に入った。デンがアルを見て立ち上がり、しっぽを振る。その頭を撫でながら
(さて、ボクはこれからどーしたらいいんだろう)
 アルは弱り切っていた。難解な本を理解するのは得意だが、こんな局面では何の知恵も浮かばない。ウィンリィの顔をまともに見られなくて俯いた。
「ちょうどよかった!ばっちゃん、村までお使いに行ってて退屈してたのよ。何して遊ぼうか。…あれ、アルは?一緒じゃないんだ、珍しいわね」
 喋ったらバレる。アルは俯いたまま首を振った。
「ふーん?後から来るの? 何かどうかしたの?元気ないのね。ハハーン、あんた達、またケンカした?やだぁ、またアルに負けちゃったんだ」
 ウィンリィは早合点してケラケラ笑った、アルは大人しく頷く。逃げ場を求めて窓を見ると、兄はウィンリィの言葉を聞いたらしくもの凄い形相で睨んでいた。冗談じゃない。冷や汗たらたらなのはこっちだ。
「なっさけないの。でも、いつもみたいにくっだらない理由なんでしょ?どうせあんたの方が悪いんだろうから謝らないと駄 目よ。
 あ、そうだ。クッキーあるけど食べる? アルの分も包んでおくから、それ持って仲直りしてね」
 ウィンリィはアルに背を向けてクッキー缶を棚から下ろそうとした。だが、まだ背が小さいので届かない。椅子を棚に近づけ、それに昇って缶 に手を伸ばす。
(逃げるなら今だ!)

 

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