「神っ田……」
 アレンは耐えきれず、自分から神田に深く口づけた。神田を煽るように胸元に唇を落とす。突起をカリッと小さく噛んだ。
「………うっ」
 神田の形のよい眉が顰められる。アレンはその反応を味わうように唇だけでそれをコリコリと揉んだ。ペロリと嘗め上げ、また揉み込む。
「……う……んんっ」
 神田の息づかいが荒くなった。アレンは舌の愛撫を続けながら、長い指で神田のものを探り当てる。一度先端を大きく抉ってから、指が輪をかいて扱き上げる。
「あ……んんっ!」
 思わず嬌声を上げさせられ、神田は固く目を瞑った。腰と胸がジンジンするほど気持ちいい。


(……こんの…野郎…っ。さんざん仕込まれてやが…るっ)

 

 アレンの舌と指が入れ替わった。アレンは神田の腰に顔を埋める。襞と筋をざらざらした舌でなぞる。擦る。大きく温かな口が包み込む。神田の身体はそのたび、面 白いように跳ねた。限界が近い。

「……のっ、いい気になりやがっ…てっ」


 神田はアレンを腰からもぎ放した。アレンのまなざしはまるで盛りのついた猫だ。淡い灯の下で赤く光っている。呪われた赤い瞳が誘っている。その妖艶さに魅入られるようにアレンの唇をむさぼった。指先が背中を辿り、最奥へ潜り込む。軽く抉った。
「ヒッ………んんっ、ああ…んっ」
「気持ち、いい…か?」
「い…いいっ…」
 潜り込んだ指に粘膜が絡みついてくる。収縮が凄い。もっと奥へ引き込もうとする。ざらついた部分は女の膣の中のようだ。抱かれる事に馴れた身体は、もう一本指を増やしてもすぐ受け容れる。
「……んっ、ああっ、ぁ…やあぁっ!」
 過ぎる快楽に耐えかね、アレンは髪を打ち鳴らすように左右に振った。神田の指の動きが激しくなる。幾度もアレンの中を上下し、掻き回した。
「あっ!あっ!あっ!あっ!」
 アレンの身体が仰け反った。
 神田は乱れる身体を抱き留める。


(全く、こいつって…本当…)

 快楽に弱い。

 求め合う指が互いのものにも絡みつく。お互いをいじり合いながら、唇をもう一度重ねた。アレンは神田を縋るように見つめる。指も震えていた。


「……あ…あ…もう…お…願い…神田…神田ぁっ!」
「バカ…がっつくなよ」
「だ、だって…」


 目が涙で濡れている。それを舌先で嘗め取り、神田はアレンをうつぶせにした。既にドロドロに熟れきった体内を一気に貫く。


「あ………っ…あ……やぁっ!」


 アレンは岩を両手でギュッと掴んだ。縋り付くように抱きつく。
「ううっ……あっ! ぁ……っ…ふぅ……んっ!」
 チャプチャプと音がする。アレンの身体が波音を立てる。二人の身体が湯を外へ流れ落とす。
「あっ…好きっ! んっんっ…あ…っ」

 熱い。湯が熱い。体の中が熱い。沸騰しそうだ。チャプチャプ音がうるさい。いやらしい。声が。喘ぎ声が止まらない。心臓が破裂しそうだ。
「あっあっあっ……んっ!」
 体内に神田がいる。掻き回され、抉られ、穿たれる。
 溶ける。もっとそこからドロドロに溶けて、一つになって、何もなくなって、気持ちよくて、心臓の音が、湯の音が、雨の音が何もかも全部全部体の中で音楽みたいに反響する。
「あっ……ふ…んんっ!」
 最初、解った神田の形も何度も体の中を往復していく内に解らなくなって、また身体が熱くなる。抉られる。引き寄せられる。


「は……あんっ!……いいっ!…熱っ」
「お湯と俺と……どっちが熱…い?」
「あ…っ!神田…っ、神田の方が熱…っぅ」


 神田が薄く笑っている。見られている。恥ずかしい。薄目を開けると、唇を塞がれてもっと交わる。深く、もっと深く。何度も腰が打ち付けられる。もう入りきらないのに、もっと求められる。それがたまらなく嬉しい。
 湯船から引きずり出され、洗い場に投げ出された。足を折り曲げられて、またのしかかられる。冷たい岩がほてった身体に気持ちいい。
「あっ…ああっ!」
 アレンは神田を抱き締める。背中に爪を立てている。目の奥が痛い。


『側にいろ』


 神田がとうとう言ってくれた。どうしても言って欲しかった言葉。望んでいた言葉。
 好きでも愛してるでも、そんなのでなくてもいい。
 ぶっきらぼうでも、素っ気なくても、それが神田の本心ならどんな言葉でも構わない。
 死んでもいい。
 神田の側にいられるなら、どうなってもかまわない。

 

「はっ……好きですっ!好き! あっ! あ!」
 パチパチと身体の細胞が弾け始める。身体の秘奥がうねる。囓り取りたいほど、神田が欲しい。神田に犯して欲しい。むしゃぶりつく。もっと欲しがって。もっと僕を求めて。

 

「……アレン」

 

 耳元で神田が囁いた。それだけで全身を歓喜が貫く。

 

「…………っあ-----っ!」

 

 アレンの身体が反り返る。痺れるような絶頂が押し寄せた。最奥からビクビクと白いものが飛び散っていく。ガクガクと腰が震えた。もう何処までが自分なのか解らない。 神田に優しく口付けされるまで、アレンは自分をなくす程の快楽に揺らめいていた。

 

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