「春謳う猫」8

 

「あ…あっ、ああっ!」

 夏野の指が徹の腕に食い込んだ。
 夏野の限界が近いのを知って、徹の指が鈴口をカリッと引っかく。それで充分だった。

「んぁあああっ!」

 夏野の体が突っ張る。腰に全ての神経が集中し、弾けた。
 白濁した液が勢いよく迸り、徹のシャツや腹に飛び散る。
 夏野はぐったりとシーツに沈み込んだ。快感が激しすぎて少し混乱している。
 他人から与えられた、初めての絶頂についていくのが精一杯だった。

「凄ぇ…一杯出たな、夏野…」

 徹も興奮してるのか、濡れた手や腹を見下ろしている。

「…言うなっ…て」

 夏野は喘ぎながら、羞恥に顔を染めた。
 余韻に酔いながらぼんやりと、ティッシュで液を拭う徹を見つめる。

(…あ、徹ちゃん、まだジーンズを履いたままだ)

 そこは明らかに膨らみを見せていたが、隠されたままだ。
 自分は殆ど裸同然な上、全てを晒したというのに。

(…自分だけズルイ…)

 指を伸ばして、ジーンズを脱がせようと思ったが、その前に徹のキスに阻まれた。
 舌が熱く絡み合う。その間も夏野の体を優しく愛撫する。
 再び、徹の手が自分を高めようとしてるのを感じて、夏野は心の中で必死に抵抗した。
 また徹に一方的に見られて、果てるのは嫌だ。
 お互い初めてなのだから、徹にも自分と同じ位感じて欲しい。

 わななく指を必死に動かし、徹のジーンズのベルトを掴んだ。
 腰を巡り、徹の膨らみに辿り着く。
 布越しでも熱さと大きさを感じた。いきなりギュッと握り込む。

「うあぁっ…んんっ!」

 予期してなかった甘い痛みに、徹は思わず声を上げた。
 しかも最後の方はやや上擦っている。夏野はニッと笑った。

「徹ちゃん…いい声」
「こいつ…」
「徹ちゃんばっかり…ズルイだろ。俺にも…させてよ」

 徹は恨めしげに夏野を睨んだが、夏野は構わず膨らみを愛撫し続けた。
 徹はこみ上げてくる快感に目を閉じる。

(…ホント、負けず嫌いなんだからな、夏野は)

 徹は内心苦笑する。
 徹は尽くす方だから、夏野を存分に気持ちよくさせるだけでも充分だった。
 だが、こうして夏野から触れてくれるのもひどく嬉しい。
 夏野は甘く熟れた瞳で囁いた。

「徹ちゃんも…脱いで」
「あ…うん」

 布越しの愛撫にもどかしさを感じていた事もあって、徹は素直に従った。
 夏野から受ける視線が照れ臭い。
 出来るだけ急いでジーンズから脚を抜いた。
 徹の青い匂いが立ち込める。

「うわ…」

 夏野は素直に驚きで目を見張った。他人のものを間近で見るのは初めてだ。
 徹の方が体格がいいから、自分より大きいだろうと予測はしていた。
 だが、興奮で怒張し切ったそれは一瞬、夏野をたじろがせる程だった。
 既に先細りでとろとろに濡れそぼり、若草にも蜜が溜まっている。
 軽くつつくと腹まできつく反り返り、徹は顔を真っ赤にして俯いた。

「凄…。これでよく我慢してたな」
「……お前が触るからだろ。それに、な、夏野が…あんま色っぽいからさ」
「…言うなって」

 夏野は照れ隠しに徹のを握った。それだけでグンと体積が増す。
 熱い。濡れてる。それだけで興奮する。
 軽く手を動かすだけで、夏野の肩を掴んでる徹の震えが伝わってきた。

「んぁ…あ…」
「徹ちゃん…気持ちいい?」
「…うん」

 徹は目を瞑ったまま、こくこくと頷いた。
 目元が赤い。腰がガクガク揺れてる。
 かわいいと思いながら夏野は微笑んだ。

「あ…はっ、夏野…」

 扱くたびに徹の体がぴくんと跳ねる。
 頬にうなじに口付けながら、強弱をつけて擦った。

「うぁ…」

 徹が身を捩らせるたび、夏野は深い満足感を覚えた。
 徹に抱かれるのは気持ちよかったが、夏野も男だから征服欲がある。
 徹の全てが知りたいと思った。
 徹にもっともっと気持ちよくなって欲しい。俺を感じて欲しい。
 手で擦ってるだけじゃ足りない。一緒に気持ちよくなりたかった。
 ふと、自分のものと徹のものを一緒に触れ合わせてみた。

「…うんっ!」

 粘膜同士の接触に甘い痺れが駆け抜ける。
 思い切って一緒に握った。両手で同時に擦り上げる。

「ああっ、夏野っ! そ、それ、ダメだ…って」
 徹が薄目を開けて、首を振った。
「…どう…して? 俺、凄…ぇ気持ちい…い」
「気持ち…よすぎて…死んじ…まうぅ」

 徹は夏野の肩に凭れたまま喘いだ。
 夏野は笑う。徹の手を自分と同じように握り合わせた。

「徹ちゃん…も、一緒に…しよ…?」
「夏野…」

 切なげな徹の目元にキスしながら、性器を傾けて鈴口を触れ合わせる。
 唾液のように、透明な液が一つに繋がった。

「ほら、ここも徹ちゃんとキスして…る」
「バカ…」

 今度は徹の方から夏野にキスしてくる。
 唇と舌を絡めたまま、二人で一緒に動かし始めた。
 硬い芯を擦り合わせるたび、全身がジンジンする。
 気持ちよすぎてやめられない。
 二人の手から激しく卑猥な水音が立つ。溢れる蜜は留まるところを知らない。
 腰が痺れる。お互いの喘ぎが余計欲情を煽る。頭がどうにかなりそうだ。

「んんん…はぁっ!」

 既に限界間近の徹はすぐスピードを上げた。
 イッたばかりの夏野はその性急さに翻弄される。
 キツ過ぎる快楽についていくのが精一杯だ。

「あっ、ああっ、徹ちゃん…ああっあ!」
「夏野…夏野…っ!」

 徹の声も切羽詰っている。
 突然、今までになく深く口づけられたかと思うと、夏野はあっという間にベッドに押さえつけられていた。
 徹は息を荒げたまま、夏野を見下ろしている。
 が、髪の毛でよく表情が読み取れない。

「徹…ちゃん…?」
「ごめん…っ!」

 徹は少し泣きそうな声だった。

「俺っ…、俺っ、もう我慢できな…っ!
 夏野にっ、夏野に挿入たいっ! 挿入たい…っ!」

 お互いの下腹部に硬い熱が当たっている。
 熱く滾ったそれは軽く触れ合っただけで鈍い甘さと辛さを訴えた。
 絶頂まで後一歩だ。苦しい。解放されたい。

 徹の思いはよく解る。
 夏野も同じだ。徹のものになっていい。一緒に融け合いたい。

(でも…)

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